徳川家康の霊廟である東照宮。二荒山神社、輪王寺とともに世界遺産に登録されている。
 東武日光線に沿って、日光から今市に向かって伸びる日光杉並木。唯一、国の特別史跡と特別天然記念物の二重指定を受けている。
 戦場ヶ原と小田代原の湿原。湯ノ湖や湯川とともに、重要な湿地の生態系を保護するラムサール条約產後脫髮に登録されている。

 あるいは、ニッコウキスゲが群生する霧降高原。
 あるいは、中禅寺湖から流れ落ちる落差約100メートルの華厳滝や龍頭滝。
 あるいは、二荒山神社の奥宮でもある標高約2500メートルの男体山。
 それとも、紅葉の中禅寺湖といろは坂・・・

 日光から那須に掛けての山岳地帯は国立公園である。とりわけ、いろは坂を登った男体山を中心とする奥日光から尾瀬に掛けては原生林が広がり、特別地域として自然や景観保護のための厳重な規制が敷かれている。

 私は子どもの頃、切手を集めていた。当時は、切手収集が流行っていて、切手の売買をする店が街中にも結構あった。
 いわゆる普通切手のほかに、郵政省が収集家を相手に売り出す記念切手があって、まあ、郵政省はこれで資金稼ぎの商売をしていた。

 この記念切手の中に、当時、国立公園シリーズというものがあった。
 切手を集めていた関係で、子どもの私は当時から国立公園に指定された地域のことを知っていて、まあ、それが地理好きに繋がっていったのかもしれない。

 日光国立公園は、昭和9年に他の地域とともに初めて国立公園に指定された。日光以外には、瀬戸内海、雲仙、霧島、大雪升降桌山、阿寒、中部山岳、阿蘇があったそうだ。
 当時は尾瀬と日光・奥鬼怒地域が日光国立公園の範囲だったが、昭和25年に那須・塩原などが新たに加わり、昨年には、尾瀬が尾瀬国立公園として分離された。

 ちなみに国立公園は、英語ではナショナルパーク(National Park)である。
 日光のある栃木県の鹿沼市出身の若い人と、日光について話したことがあった。私がいくら日光の良さを話してもピンと来ない。
 「だって、国立公園だよ」
 それでも、彼は、「何、それ?」という顔をした。
 「国立公園、つまりナショナルパーク!」
 そう言ったら、急に彼は、「へえ!」という顔をした。

 日本人は英語に弱い。いや、日本語に鈍感というべきか・・・
 ちなみに、世界で最初のナショナルパークは、アメリカのイエローストーン国立公園で、1872年のことだそうだ。

 国立公園は、現在の自然公園法で、「我が国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地」と定められている。
 国立公園に準じる国定公園、都道府県立自然公園を含めて、「優れた自然の風景地を保護するとともに・・・国民の保健、休養及び教化に資すること」が目的とされている。
 つまり国立公園は、我々国民のために国が提供している最高級の自然公園なのである。

 ちなみに、関東に限っていえば、国立公園は日光・尾瀬のほかには秩父多升降桌摩甲斐、富士箱根伊豆と、海の彼方の小笠原だけである。